電解研磨は加工上の問題点や素材がもつ問題点を表面化させます
電解研磨をする製品は様々な加工工程を経ています。加工や取り扱いが適切でないと電解研磨で表面化し、その仕上りに大きな影響を与えます。修正、回復が困難であったり、多額の費用がかかったりしますので注意が必要です。
【熱処理】
熱処理による仕上り異常は多くあります。熱処理による鋭敏化などが原因と考えられますが、電解研磨の仕上りとしては荒れて白く、あるいは灰色、あるいは黒っぽくザラザラすることが多く、外観が非常に悪くなります。電解研磨を行う製品の熱処理には不具合が出ないように細心の注意が必要です。
※鋭敏化とは
ステンレス鋼を高温に加熱すると結晶粒界にCr炭化物が析出し、結晶粒界近傍の母地にCr欠乏部が生成します。Cr炭化物が結晶粒界に生成して粒界腐食しやすくなることを鋭敏化と呼びます。
【洗浄】
洗浄による仕上り異常もよく発生します。電解研磨することでシミが発生し問題が発覚することが多いです。
トリクレン洗浄は専門業者が処理したものは比較的問題は少ないようです。表面が侵食されていない限り、当社で再洗浄することでコストはかかりますが解決可能です。アルカリ洗浄は水洗がポイントです。水洗が不十分だとシミになる事がよくあります。
【バフ研磨】
バフ研磨後に電解研磨することは多くありますが、粗磨きのあとの研磨が充分でないと部分的に、あるいは全面に渡ってバフ研磨面が消えてしまい、仕上りとしては光沢面と白くザラついた面との斑になることがあります。
【ロストワックス】
処理が適切でないと電解研磨で結晶模様が浮き出てくる場合があります。切削面においてはよく目立ちます。見た目の悪さが主に問題となります。
切削面に結晶のような模様が浮き出ている
【溶接】
溶接した部分でよく聞かれるのは以下の点です。
- 溶接部分のビードを取り除き、バフ研磨するとつなぎ目がわからなくなりますが、電解研磨するとその部分が白く浮き出てきます。
- 溶接部分が黒く炭化したようになることがあります。これは電解研磨で取り除くことはできません。事前に削り落とすことが必要です。